マイクロ接合研究委員会　第50回

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M J 　　第５０回　マイクロ接合研究委員会

			第４９回	第５１回

■ MJ-274-96・・・携帯パソコンにおけるフリップチップ実装

嶋田利泰,大須良二,中村博文,銅谷明裕(日本電気㈱)

　ＬＳＩの高速化／多端子化の技術動向に対応した接続技術としてバンプ接続（フリップチップ技術）があるが、従来のバンプ接続技術には幾つかの大きな技術的制約のために、他の技術と比較してコストの高い技術になっていた。このため大型コンピュータ実装等の特殊な用途以外には用いることは出来なかった。汎用フリップチップ実装技術はこのバンプ接続技術の技術課題を解決し、低コスト化を実現することにより幅広い用途のＬＳＩ接続に使えるようにしたものである。汎用フリップチップ実装技術を実現する要素技術は以下の３点よりなる。その第１は従来のフリップチップのようにハンダバンプ用のバリアメタル上でなく、通常のアルミパッドを有するＬＳＩに直接バンプを形成する技術である。第２は簡便かつ安価なバンプと基板との接続工法の開発である。特に今回開発したはんだ接続工法の特徴は、フラックスを用いずにハンダ接続をしている点である。ポイントはハンダ付け時の酸素濃度、ハンダ表面の清浄度、はんだ付け時の加圧の３点である。比較的容易な条件管理で信頼性のあるはんだ接続が実現できることがわかった。第３はＬＳＩを搭載する基板に汎用性のあるプリント基板を使用する点である。従来のフリップチップ実装技術では熱膨張係数をＬＳＩシリコンに合わせるためにセラミック基板が必須で、プリント基板は信頼性上使用できなかった1)。汎用フリップチップ実装ではアンダーフィル技術（接着用の樹脂をチップと基板の間に入れる）ことによりこの問題を解決した。市場ニーズに応える携帯ＰＣに求められるものは高機能化に加えて軽量小型薄型化、そしてマンマシンインターフェースの向上にある。これらを実現する手段として、ＬＳＩ化と高密度実装技術の採用が必須となってきた。特にフリップチップベア実装を用いたＭＣＭ（マルチチップモジュール）は高密度実装技術の有力なキーテクノロジーとなってきている。フリップチップベア実装の適用例として、ＭＣＭ-Ｌとその携帯パソコンへの応用を示した。スーパーコンや大型コンピュータ等のハイエンド情報装置のみに適用されていたフリップチップベア実装が、このような携帯情報機器の適用されだしてきている。これは汎用フリップチップ技術として低コスト化が実現出来たためである。

■ MJ-275-96・・・ス－パ－ジャフィット法によるはんだプリコ－ト技術

堺　丈和，荘司孝志，倉本武夫(昭和電工㈱)

　当社ではファインピッチ化、高密度化に対応したソルダリング技術としてはんだ粉末を利用した新しい概念によるはんだプリコート技術”スーパージャフィット法”（以下ＳＪ法と略す）の開発に成功し、工業レベルにおいて実用化した。本工法は膜厚のバラツキ、膜厚の制御及び種々のはんだ組成に対応でき従来技術を上回る特長を有している。その特長を生かしてＴＣＰの実装のみならずフリップチップ基板へと実用化が進んできている。更に、一括リフロー用はんだプリコート法や、シリコンバンプの形成への応用としても期待されている。ＳＪ法のプロセスは酸洗→薬剤処理→乾燥→粉末付着→後処理→フラックス塗布→リフロー→洗浄であり、ＳＪ固有の設備として、１）はんだ粉末付着装置、２）後処理装置がある。ＳＪ法の特長は１）化学的手法による粘着膜を形成すため、マスキング等は一切必要とせずに膜厚精度が優れたはんだプリコートが得られる、２）両面はんだ処理が１回のプロセスで形成できるため、低い熱履歴と均一な膜厚が得られ、ＲＭＡ型クリームはんだと信頼性のある濡れ広がり性が確保されている、３）はんだ粒径を変えることで膜厚が変えられるため、１０～１００μｍと広範囲な膜厚が設定できる、４）粉末組成を選択することではんだプリコートの組成を変えられ組成選択自由度が高い、５）銅回路面以外にもフラッシュ金やＮｉメッキ面、パラジュウムメッキ面へもはんだプリコートできる等がある。応用例では
１）ＴＣＰの接合用途　２）フリップチップ（ＦＣ）の接合用途　３）シリコンバンプの接合用途　４）その他、一括リフロー用、携帯電話用基板、アルミナ基板に銅の厚膜ペーストにて回路を形成した基板及びガラス基板へ薄膜にて形成された基板等の用途がある。

■ MJ-276-96・・・マイクロボ－ルバンプを用いた実装技術

下川健二，巽　宏平，橋野英児，大関芳雄(新日本製鐵㈱)

　微細な金属ボール（マイクロボール）の製造方法と、それを用いたバンプ（マイクロボールバンプ）の一括形成法を開発した。径のバラツキが少なく真球度の高い35μｍ～100μｍ径のマイクロ金ボールと60～300μｍ径のマイクロ半田ボールを作製した。精密に制御した一定重量の金属を溶解し、溶融金属の表面張力を用いることで球状化した。マイクロボールを一括して半導体チップあるいは基板の電極に接合/配列する方法を開発し、マイクロボールマウンターを試作した。容器中のボールを微小振動で跳躍させること等により、電極に対応した位置に孔の開いた配列基板に過不足無く一括してマイクロボールを吸引保持する。ボールと電極の位置合わせ後、熱圧着接合によりマイクロ金ボールバンプを形成した。マイクロ半田ボールバンプの場合は、予め基板電極にフラックスを塗布しておき転写配列後にリフローして形成した。本実装技術はフリップチップ、ファインピッチＢＧＡあるいはＴＡＢ等のバンピングに適用できる。

■ MJ-277-96・・・Ａｕ合金ワイヤを用いたボ－ルボンディングの接合信頼性

板橋一光，村井　博，三村利孝，徳山威吏(田中電子工業㈱)

　近年、小型電子機器の普及や電子制御装置の多様化等に伴い、小型・高密度化した半導体ICパッケージの高い信頼性が要求されている。Auワイヤを用いたボールボンディングにおいてはAl電極パッドとの過度の相互拡散の進行に伴う金属間化合物の成長やボイドの生成が接合信頼性を低下させるため、これに対応できる新しいワイヤ材料が求められている。本報では一般に用いられる純度99.99mass％のAuワイヤと新たに開発した1mass％Pdを添加したAu合金ワイヤを供試材料とし、ボンディングしたサンプルを加熱放置しその接合信頼性を調査した。Au合金ワイヤを用いることによる優位性を以下のように明らかにした。１． Al板にボンディングしたサンプルの接合部断面観察結果より、Alとの活性化エネルギーを高め、 Au/Al金属間化合物の生成速度を適度に抑制することが確認できた。２． Siチップ上に蒸着したAl膜にボンディングしたサンプルのボールシェア荷重の測定結果より、接合強度の低下を防止できることがわかった。３．樹脂モールド後のサンプルの電気抵抗測定および接合部断面観察結果より、金属間化合物が樹脂の成分と反応して起こると思われる電気抵抗の増大を防止でき、電気的な接合信頼性も向上できることが確認できた。

■ MJ-278-96・・・ＩＣリ－ドフレ－ムの金錫接合部の強度特性

御田　護(日立電線㈱)

　Ａｕ－Ｓｎ平衡態図系における490Ｋ共晶点付近の接合系の確立を目的に、複合リ－ドフレ－ムのインタ－ポ－ザとリ－ドフレ－ムの接続試験片を用いて、それぞれに金および錫のめっきを施して加熱加圧接合実験を行い以下の結論を得た。(1)接合強度は、インタ－ポ－ザ側の金めっき厚さと、リ－ドフレ－ム側の錫めっき厚さを最適値に管理することによって、インタ－ポ－ザの有機材料を損傷させない温度での短時間の一括接合が可能である。(2)フィレット部以外の接合部の境界の金の成分比率は、加圧接合によって初期の設定めっき厚さから計算される濃度より高くなっており、また、その周辺のフィレット部では錫の成分比率が高くなっている。(3)この結果接合部の耐熱温度は接合温度より高くなり、基板実装におけるはんだペ－スト印刷リフロ－温度(503-523Ｋ)に十分耐える耐熱性が得られる。(4)接合部は半導体装置に求められる大気中423Ｋの恒温放置試験及び、358Ｋ×85％ＲＨでのエレクトロマイグレ－ション試験（直流バイアス電圧印加）に対し、十分な信頼性を持っている。

■ MJ-279-96・・・視覚認識を用いた３板式ＣＣＤカメラの組立

岸本　真，山本裕一，甲斐田一弥，石田淳一(シャープ㈱)

　電子機器製品の高機能・高性能化に伴って、調整工程の自動化の重要性が増している。しかし、調整工程の多くは人手に頼っているのが現状であるうえ、若年者の製造業離れによる熟練作業者不足や労働時間の短縮などの社会構造の変化が、生産技術上の新たな課題として浮かび上がってきている。また、製品自体の要求仕様も年々高くなってきており、人手では作業不可能な工程も増加している。このような状況に対応するためにも、調整工程の自動化が急がれている。一方、近年のコンピュータ技術の発達により、画像処理をはじめとする各種センシング技術を応用した高度な認識機能や判断機能を自動化システムに持たせることが可能となり、困難な調整作業の自動化への取組みが進んでいる。そこで、本発表では、技術的課題を解決する一つの手段としてセンシング技術をとりあげ、３板式ＣＣＤカメラ調整組立作業への応用例を紹介する。液晶ビューカム等のビデオカメラにおいては高画質化のため、３板方式カメラの開発は必要不可欠であり、その中でも撮像ユニットの開発は、性能・コストを左右する重要課題となる。３板式ＣＣＤカメラにおいては、色分解プリズムのＲＧＢ各出射面に対し３個のＣＣＤ素子のＲＧＢ画像が一致し画像のずれが発生しない様に、μｍオーダーで調整・固着する必要がある。しかし、この調整作業は調整因子が多い上に、μｍオーダーの調整精度が要求される微細作業であることから、人手では生産上不可能な作業であった。そこで、撮像ユニットの安定した調整作業に不可欠な要素技術あるマニピュレーション、画像計測手法、およびマイクロ接合技術を開発し、３板式ＣＣＤ調整組立装置の実用化を行った。

■ MJ-280-96・・・超音波画像技術と電子部品への応用

小倉幸夫(日立建機㈱)

　ＬＳＩやチップコンデンサ－等の電子部品の非破壊検査手段として、最近、超音波探傷試験が多く用いられている。Ｘ線検査等の他の非破壊検査法に比較して、接合界面の剥離やボイドの検出性が優れているからである。電子部品を対象とした超音波探傷試験法では、水浸式による画像法が多用されており、部品に内在するき裂やボイド及び接合界面の剥離等をリアルタイムに２次元または３次元表示する事が出来る。最近の画像装置では、コンピュ－タ－制御による高いＳＮ比を有するパルサ－・レシ－バ－が採用され、オ－トフォ－カスが可能でかつ高速描画が出来るものが使用されている。また、スキャナ－は、走査ピッチが最小１μｍ程度のものが採用され、再現性が良くかつ高分解能画像化が可能である。ソフトウエア－としては、Ｂスコ－プ（断面表示）、Ｃスコ－プ（平面表示）、３Ｄスコ－プ（立体表示）等の各種の表示法、剥離の自動判別法及びその面積率や寸法の計測等多彩な画像処理ソフトが実用されている。これらの画像法をＱＦＰ、ＴＳＯＰ，ＢＧＡ，ＣＳＰ等のＬＳＩ半導体の検査に適用する事によって、パッケ－ジ内のき裂やボイド、封止材とチップ界面の剥離、チップのき裂、ダイアタッチの非接合部、バンプ接合部の剥離等のきずを検出し評価する事が出来る。今迄の経験や実験結果によれば、剥離の隙間が５ｎｍ程度存在すれば検出できることが分かっている。また、ボイドの場合、適当な描画条件で検査すれば、直径数１０μｍ程度のものを見つけることが可能である。

■ MJ-281-96・・・印刷パタ－ン外観検査装置

服部新一(日本アビオニクス㈱)

　ＩＣに使用されるパッケージにはＩＣのチップからの信号を外部へ出力するための配線が形成されている。主なＩＣパッケージの種類はセラミック、プラスチック、ＴＡＢ等がある。また、ハイブリッドＩＣのような複合部品においても同様な回路パターンが形成されている。パッケージ内の配線部分の検査は導通テスターまたは人手による目視検査でおこなっており、非常に手間のかかる問題である。このようなパターンの欠陥計測（認識）を画像処理、光学、機械、システム技術を結集して装置化を実現した。最近のＩＣの小型化は配線パターンのファインピッチ化により目視、テスターも限界になっており外観検査への期待が高い。本稿では、このような問題を解決するために開発した印刷パターン検査装置：ＡＴＥＳ－１１５０シリーズについて紹介する。

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